第2回 「人間らしく悩み、己を育てる」
矛盾に挑み続け、真のベンチャー精神を貫く、千本倖生氏。
時代を変え、世界を動かしてきた強靭な原動力はどこにあるのか。
そして、本質的な意味での“経営”とは、“ベンチャー”とは、一体何なのか―。
昨今からの経済危機の影響で不安ばかりが先走りますが、千本氏の生き方や働き方の真髄を見れば、誰もが奮起するはずです。どうぞお楽しみください!
前回は、連載第一回目ということで、学生時代から新入社員時代までをお話しました。今回は、第二電電株式会社(現:KDDI)の創業についての話をしながら、いかに私が悩みながら挑戦をしてきたかというのをみなさんにお伝えしたいと思います。
第一回でご紹介したように、留学を通してアメリカ社会における価値観を肌で感じ、私は非常に大きな衝撃を受けました。その後も、衝撃の跡がなくなることはありませんでした。

「日本電信電話公社(現:NTT)が民営化しただけでは効果はなく、きちんとした競争力を持つ競争相手が存在しなければ、日本の通信事業の未来はない。なんとかしてフェアな競争をさせよう」という想いは強くなっていく一方でした。
みなさんもターゲットは大きく、目線は高く、想いを描くべきです。ただし、想いを可能なものにするには、十分な準備が必要です。私自身も、第二電電株式会社(現:KDDI)を創業する前に、1年間は慎重に考えました。ちょうど4人目の子供ができたばかりだったので家族のことも考慮して、何度も何度も悩みました。
いま転職をするかどうかなど、みなさんにもさまざまな悩みがあると思います。悩むことは苦しいかもしれませんが、悪いことではないのです。非常に人間らしい行為です。人は悩んでこそ、偉業を成し遂げられるのではないでしょうか。時間が許す限り、ぜひみなさんには悩み抜いてほしいです。
たとえば人間関係がうまくいっていない、給与に不満があるという理由で転職を考える方がいるかと思います。また、表面的には口当たりのいい言い訳を並べても、突き詰めると、単に会社が嫌になったという例は少なからずあるはずです。けれども、そのような否定的な動機で転職をしても、“横ズレ”にしかなりません。現実逃避の手段としての転職は、成功には程遠いです。
もちろん、すべての転職を認めないと言うつもりはありません。私も転職というか、退職をして起業しています(笑)。移り気のように会社を変えるのではなく、高い志や目的性を持つ転職にこそ意味があると言いたいのです。

転職という言葉に踊らされるように、入社後早い時期から新しい会社を探す方がたくさんいます。大げさに聞こえるかもしれませんが、10年間は1つの会社でがんばり続けなければ、一人前には成れません。10年も居ると社会も企業も状況が変化し、あらゆることを学ぶようになります。そうして、人として社会人として成長できるのです。
少々厳しいようですが、勤務年数の浅い方の転職を見ていると、「4、5年働いたくらいで、仕事の何をわかっているのだろうか?」と思ってしまいます。何回も転職を続けている方などは、私には軽薄に感じてなりません。
起業にしても同じです。既存の企業より、ベンチャー企業には苦労が計り知れなくあります。それにもかかわらず、勢いだけで会社を興してしまうのはあまりにも浅はかです。
みなさんも人生に対する本望というものをよく考えてみてください。苦悩し、熟慮し、自分自身の心にしっかりと“重装備”を行ってください。そうしたときに、はじめてあなたは本物を掴むことができます。




